スポーツ放映権資料室

スポーツ放映権に関する情報をまとめた資料室です。 「放映権事情を妄想しながらスポーツ中継を楽しむ」の別館です。

本館「放映権事情を妄想しながらスポーツ中継を楽しむ」https://www.sportmediarights.tokyo/

2022FIFAワールドカップ・カタール大会については、従来のジャパンコンソーシアム方式が崩壊。NHK・フジテレビ・テレビ朝日・ABEMAによる共同購入となった。

その放映権料についてはメディアによって180~350億円と大きく差が開いている。
中でも全試合を無料ライブ配信したABEMAについては、200億円を支払ったという説が出ているが、後に親会社のサイバーエージェントから発表された決算の数字をみる限りでは、80~100億円程度と推定される。

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他社を含めた金額についても、350億円という説は信憑性が低く、200億円前後とみられる。

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2023年11月、カターレ富山が開催したタウンミーティングの報告書に以下の記述があったことがネタ元とみられる。(現在は削除)

放映権料について、当初、Jリーグはダゾーンと年間視聴者数を100万人でグリップしているが、現在は40万人程度に留まっているため、ダゾーンは大赤字となっている。

この「40万人」という数字については「年間視聴者数」となっているが、その測定方法についてまったく言及がないため、数字だけが独り歩きしている状態である。
ただし、100万人と40万人は同じ物差しであることが推定されるため、目標が大幅に未達であることは推察される。

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DAZNが日本市場に参入した当時の法人名はPerform Groupだが、Performはスポーツベッティング業者向けに映像やデータを提供するサービス「Watch & Bet」を運営していた。

しかし、Performはスポーツベッティングの胴元ではなく、また日本でカジノの導入が検討されているとはいえ、いつ実現するか見通しが立ってないことから、ベッティングによる収入めあてで参入したという説は信憑性が薄い。

Performは2019年にB2B部門とB2C部門を分社化し、B2B部門を売却。同業のSTATS社と合併し「STATS Perform」となった。
残るB2C部門は法人名も「DAZN」に改称し、現在に至る。この時点で、DAZNとベッティングとのつながりはほぼなくなった。

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2022年、DAZNはオンラインカジノ運営業者のCEOだったShay Segev氏を新たなCEOとして迎え入れ、「DAZN BET」を発表。ヨーロッパの一部の国でサービスを開始し、この時点からスポーツベッティングの胴元となっている。

DAZNが放映権を獲得したのは2017年のことだが、それ以前から民放局による全国ネットの中継はなくなっていた。

2015~16年には苦肉の策として「チャンピオンシップ」が開催され、TBSが全国ネットで放送した。それ以降、民放局で全国ネットの生中継は行われていない。


DAZN以前にJリーグを放送していたスカパーの時代にも同じ批判がなされていた。

2014年に刊行された『Jリーグ再建計画』の中に、以下の記述がある。
よくJリーグファンが「スカパー!のせいで地上波の露出が減った」とこぼすのは言いがかり以外の何物でもない。分かりやすく言うと、Jリーグにはテレビスポンサーがつかず、地上波テレビ局は放映権料を捻出できないからスカパー!が放映権料を補っている、というのが正しい認識である。

DAZNが独占している放映権は「有料放送」と「インターネット配信」であり、「無料放送」については対象に含まれていない。

現在もNHK BSで毎節1試合が生中継されており、ローカルでの放送も行われている。



Jリーグの試合映像の著作権はリーグが所有しており、報道目的であれば一定の範囲で無料で使用することができる。

それ以外の用途についても料金表が公開されており、極端に高い金額が設定されているわけではない。
DAZNと契約する際に、Jリーグが自ら映像を制作し、著作権を所有・管理する体制が整えられた。この点において、DAZNはテレビでの露出を阻害する要因ではなく、むしろ利用しやすい状況になっている。
映像の利用方法 | 事業者向けサービス | 公益社団法人 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)

  • 権利者: DAZN
  • 契約期間: 2023~2033年(11年間)
  • 放映権料: 総額2,395億円
  • 対象となる試合: J1リーグ全試合、J2リーグ全試合、J1昇格プレーオフ
  • 備考: 有料放送、およびインターネット配信についてはDAZN独占。無料放送については独占ではないため、NHKや民放ローカル局でも放送可。


2017年: DAZNと最初の契約
DAZNとJリーグが10年総額2,100億円の契約を結ぶ。
それ以前の権利者はスカパーで、年間50億円程度と言われる。
DAZNとの契約で金額は大幅に増加した一方、映像はすべてJリーグが自前で制作することになった。制作費は年間で50億円程度と推定される。
自前で制作することで、映像の著作権についてもJリーグがすべて保有し、管理する体制が整えられた。
映像の利用方法 | 事業者向けサービス | 公益社団法人 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)

2020年: 契約延長
コロナ禍により、Jリーグの開催は中断。DAZNも経営的に大きなダメージを受けた。
2020年に契約が改定され、12年総額2,239億円に変更。
契約期間は2年間延長されたが、1年あたりの金額は減少。
DAZNの契約件数がノルマを達成した場合、超過分の売上をJリーグとシェアするレベニューシェアが設定された。

2023年: 2度目の契約延長
2023年にも契約が改定され、新たに11年総額2,395億円の契約が結ばれた。
秋春制への移行にともない、2033-34シーズンまでの契約になると推定される。
この金額はレベニューシェア分を含めた最大値であるため、契約者数がノルマを下回れば実際の金額も減額される。
この契約ではJ3リーグが対象から外された。
DAZNはJ3について2025年まで契約を結んでいる。
2024年、LeminoがJ3の一部試合をライブ配信。2025年からは全試合を配信予定。
JリーグとDAZNの新たな放映権契約について


海外の放映権
2023年の実績では、約20か国に放映権を販売。その他の国ではYouTubeチャンネルで配信。
J.LEAGUE SEASON REVIEW 2023 | Jリーグ シーズンレビュー2023 | Jリーグ海外事業

2022年までは電通が代理店を担当していたが、2023年以降の代理店は公表されていない。
オンラインで放映権を取引できる「Content Arena」と提携している。
J. League to create a digital home for media rights with Content Arena - The Playknox

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